マインドフルネスの話

「サンクコストバイアス」を払拭するマインドフルネス

つまらない映画だと思いながらも「チケット代がもったいない」と最後まで見続けてしまったり。どんどん株価が下がっていても、これまでの投資を損にしたくなくてなかなか手放すことができず、結局大損してしまったり…。

投資後に回収できない「サンクコスト(埋没費用)」にとらわれてしまうことは、誰もがあるものです。「もったいない!」と感情的になってしまい、損することが分かっているのに投資をし続けて、お金や時間、労力をさらに無駄にしてしまうことは、珍しくありません。こうした状態を経済学では「サンクコストバイアス」と呼んでいます。

このサンクコストバイアスにとらわれないために、マインドフルネスが役立つことが最近の研究で明らかになりました。アメリカ・ペンシルバニア大学の研究によれば、マインドフルネスの呼吸瞑想を行うことで、回収できない過去のコストが現在の意思決定に影響を与える傾向が、優位に減少することが確認されたのです。

「今、この瞬間」に集中するマインドフルネスの状態が高まることで、過去にとらわれることなく、現在を冷静に俯瞰できるようになる。そして、合理的な判断と行動につなげることができるようになるということです。

利用していないのに契約し続けているサブスクサービスや、気が進まないのに断り切れず参加し続けているコミュニティなど、サンクコストバイアスのためにお金や時間、気力を無駄に消費している。そんなことが思い当たる場合には、一度静かにマインドフルネスの呼吸瞑想を行ってみてください。そのあとに、もう一度、今の自分に本当に必要かどうか、投資し続けて適切などうかを判断してみてください。きっと、より合理的な判断と行動がとれることでしょう。

参考:https://www.jstor.org/stable/24539809?mag=mindful-march-the-unexpected-benefits-of-mindfulness

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医