マインドフルネスの話

「感謝の気持ち」を取り戻すマインドフルネス

世界規模で広がった感染症や、予期できない災害、各地で勃発している戦争など、人々の不安を募らせるような出来事が相次いでいる昨今。日々の不穏なニュースを目にすると、当たり前だと思っていた平穏な生活がいかに恵まれていたか気づかされた、という人も少なくないでしょう。

「日常のなかの幸福に感謝する」「感謝の気持ちを表現する」ことは、精神状態を良好にしたり、憂鬱な状態を軽減する効果があるという研究報告もあり、人の精神状態に対してポジティブな影響があることは間違いないようです。

家族や友人たちに対する普段忘れがちな感謝、日常が平穏であることへの感謝を改めて味わってみる。そんな感謝の気持ちを取り戻すことから始めれば、明るい希望をもって一年をスタートすることができそうです。

「今の状態に意識を置く」マインドフルネスは、そのための有力なガイドとなります。まず、静かに姿勢を整えて座り、10分間の呼吸瞑想を行います。その後、今、自分の周りにいる一人一人の顔を思い浮かべながら、その人へ感謝していることを3つ、具体的に挙げていきましょう。

おいしいお茶を淹れてくれた。落ち込んだときに励ましの声かけをしてくれた。面白い本を教えてくれた。そんな些細なことでかまいません。その一つ一つを思い浮かべながら、感謝の言葉をかけていきましょう。紙にひとつひとつ丁寧に書き出すのも、よい方法です。機会があれば、その感謝の言葉を本人に直接伝えてもよいでしょう。

こうした感謝を思い返したり、表現する習慣が、自らの心の健康を保つ秘訣になることでしょう。今日からぜひ、はじめていきましょう。

参考:https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10503307.2016.1169332
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jclp.22469

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医