マインドフルネスの話

マインドフルネスで体の痛みが軽くなる!?

繰り返す腰痛や、ひんぱんに起こる頭痛に悩まされている、という人は少なくありません。そして、病院で検査をしても痛みの原因がはっきりとわからない、というケースも非常に多いようです。中には生活や仕事に支障が出るほど症状が強く、名医を求めて病院を転々としている、という方も。

そして最近、「腰痛はストレスが原因となっている」という説が出てきて、話題になりました。それが事実だとしたら、先のような原因不明の痛みに長年苦しんでいるケースについては、自分の心を振り返ることが、痛みを解消する糸口になるかもしれません。

精神科医である私もまた、「人の心と体はつながっている」ということを診療における大前提として考えています。例えば、強いストレスを受けた時、人の体は防御反応を起こして筋肉は硬くなり、血流を停滞させます。それが頻繁に、しかも長時間に起これば、どこかに強い痛みが生じても不思議ではありません。その逆もまたしかりで、体のどこかで強い痛みが慢性的に続けば、心のエネルギーも消耗してしまうでしょう。

「心と体はひとつ」であることを証明する研究をひとつ、ご紹介しましょう。マサチューセッツ大学マインドフルネスセンターの所長であるジョン・カバット・ジン博士が、1985年、慢性疼痛患者に対して8週間のマインドフルネスプログラムを実施したところ、ほとんどの身体的な痛みが軽減した、という結果が得られました。
しかも、その後も15か月間にわたって痛みの軽減効果が持続したことも判明。注射を用いた神経ブロックや理学療法、抗うつ薬を投与された患者には、同じ効果は得られなかったといいます。

つまり、これらの対処療法と比べても、心へアプローチするマインドフルネスが、疼痛軽減に大きな効果があることが証明されたということです。

病院に行っても原因が分からない、何をやっても軽減されない、という痛みに悩んでいる方は、一度マインドフルネスを実践してみることをおすすめします。そしてその体の痛みのトリガーは、自身の感情にあるのかもしれません。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医