マインドフルネスの話

マインドフルネス~悲しみとのつき合い方

人生最大のストレスは、家族や友人との死別といわれています。ケンカをしてしまったり、その他にもやむを得ない理由から愛する人と離別したときには、大きな心の傷を受けてしまうもの。中には仕事や生活が難しくなってしまうこともあります。

仏教では、愛する人との別れのことを「愛別離苦(あいべつりく)」と言い表します。根本的な苦しみを指す「四苦八苦」のうちの一つで、自分の力ではどうしようもない、解決しようのない苦しみのことを指しています。

マインドフルネスでは、こうした苦しく悲しい感情には「ありのままに悲しみを味わい尽くす」という向かい合い方をします。自分ではどうしようもないのだから、そのままにその感情を見つめるわけです。

そんなこと、辛くてできない!と思われるかもしれません。しかし、有名な室町時代の僧侶である一休は、自分の最愛の母親を亡くしたときに、子どものように転げまわって激しく泣き喚き、そのあとは誰もが驚くほど早く立ち直った、といわれています。

つまり、悲しい出来事に襲われたときには、悲しみをただひたすらに味わい尽くすことが大切、ということです。多くの場合、私たちは苦しみに直面した際、無理に明るくしようとしたり、他の感情にすり替えたりしてしまいがちです。その感情への向き合い方をあえて変えてみて、心が悲しむままに、自由にさせてあげるのです。

なぜならば、自分の感情からは逃げようとしても逃げられず、ふたをすれば必ず心にゆがみが出て長く苦しむことになってしまうからです。ありのままに、その悲しみをただ味わい尽くしていれば、どうしようもない悲しい出来事も、たとえ時間はかかっても、あるときから受け入れることができるようになるでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医