マインドフルネスの話

「逆境力」を高めるマインドフルネス

最近、話題になっているのが、「レジリエンス」というワード。困難にあっても、心折れずに立ち直ることができる、逆境力のことを指しています。昨年、日本人宇宙飛行士が搭乗するNASAのロケットが『レジリエンス』と名付けられたことも、大きな話題となりました。

仕事でミスをしたときや、環境の変化があったときはもちろん、新型コロナウイルスや自然災害など、避けることも予想することもできない困難に直面したとき、このレジリエンスを備えているかどうかで、人生は大きく変わります。

そして、このレジリエンスの力を伸ばすうえで、マインドフルネスの概念がとても役に立ちます。

例えば、仕事でミスをしたときに上司から強く叱責されたとき。私たちはつい「もう上司から嫌われたに違いない」「これから重要な仕事を任されることはないだろう」といった考えに支配されて、落ち込んでしまいます。つまり、私たちは実際に起きた事実ではなく、頭のなかで誇張した自分自身の想像によって、どんどん自分を追い詰めてしまう傾向があるのです。

こうしたネガティブな状態から抜け出すには、「事実をあるがままに見つめる」マインドフルネスな状態でものごとをとらえなおすことです。こうした、自分の感情に没入せず、客観的にとらえることを「メタ認知」といいます。

すると、実際に上司から「お前のことが嫌いになった」と言われてはいないことや、一度のミスで仕事を任されなくなった人はこれまでにいないことなどに気が付くことができます。行き詰っていた思考も働き出して、次にやるべきこと、ミスを取り戻すための解決策なども見えてくるようになります。

レジリエンスは、どんなことにもびくともしないタフな強さではありません。一度落ち込んだとしても、心折れたとしても、再び前を向いて立ち上がることが出来るしなやかな強さこそが、レジリエンスです。マインドフルネスの状態に自分を整えることで、このしなやかな強さをぜひ伸ばしてください。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医