マインドフルネスの話

マーケティング力を強化する「共感」を伸ばすマインドフルネス

多種多様な価値観のなかでニューノーマル(新しい生活様式)が生まれている今、社会や組織内で「共感力」が強く求められるようになっています。共感力とは、自分以外の他者と同じ目線をもって、価値観や感情をとらえることができる力のことです。

性にとらわれない働き方やSDGsなど、様々な価値観が生まれ、尊重されるなかで、社会で求められるリーダーも、一昔前の強権型から共感型へと流れが確実に変化しました。政治家の女性蔑視発言が大きく取り上げられ、退任にまで追い込まれるようになったこともまた、こうした時代の変化を表しています。新たな価値観を自らにインプットしてアップデートする力もまた、非常に重要なスキルになっています。

様々な思考と嗜好が入り混じるダイバーシティ社会において、共感力は非常に強力な武器となります。顧客とのコミュニケーションはもちろん、マーケティングや商品開発など、様々な場で必須の能力となっていることは間違いないでしょう。どんな人が何を心地よいと思い、どんなものを求めているのかを考えるうえで、共感力は欠かすことができません。

そして、この共感力は、マインドフルネス瞑想で伸ばすことができることがわかっています。クイーンズランド大学が行った研究によると、人々の写真を見て感情を特定するテストを行ったところ、5分間のマインドフルネス瞑想を行ったグループが、行わなかったグループよりも、はるかに高い正答率を示したことが分かりました。

善悪や正否の判断をせず、あるがままにものごと見つめるのが、マインドフルネスの基本です。これを常態とすることで、様々な価値が入り乱れるダイバーシティのなかでも、しなやかで自由な思考のもと、だれよりも豊かなマーケティング能力を発揮していけることでしょう。

参考:Tan, L. B., Lo, B. C., & Macrae, C. N. (2014). Brief mindfulness meditation improves mental state attribution and empathizing. PloS One, 9(10), e110510.

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医