マインドフルネスの話

「リア充」な自分を無理につくるリスクとは

楽しそうなパーティの様子や、高級な食事の様子をSNSにアップして、「リア充」な自分を世間に発信する・・・そうした行為が今は少なくありません。
ポジティブで楽しそうな自分をアピールすることで、自身の気持ちを高めたり、充足感を得ることは決して悪いことではありませんが、こうした行為で自分のネガティブな感情に蓋をすることになっているとしたら、問題があるかもしれません。

自分自身を無理やりテンション高く、躁状態にすることで心を守ろうとすることを精神医学では「マニック・ディフェンス(躁的防衛)」といいます。泳ぐことを止めると呼吸ができなくなって死んでしまうマグロのように、自分を常に追い込んでいるのです。

しかし、無理な状態を続けることは当然できないため、必ず動けなくなるときが訪れます。このときに、自分の精神を健全に保つことが出来なくなってしまう人が、少なくありません。

最近、問題視されているSNSでの行き過ぎた攻撃的な投稿をする人も、自分の生活の中で生まれた不満や怒りなどのネガティブ感情の発露であるとも言われています。

「自分は、無理に楽しそうな自分を作っているかもしれない」「自分と関係のない出来事に対して、行き過ぎた感情を抱いたり、過激な発言をしている・・・」

もし、そう思い当たる部分があるとしたら、一度、自分の感情をあるがままに見つめることをおすすめします。マインドフルネス瞑想を行いながら、外へ向けて発散していた意識を、自分の内側へ向けて過ごしてみましょう。自分を客観的に、あるがままに見つめることで、自分の中にある本当の感情に気が付くことができるようになります。

それを一度、そのまま受け入れることが、ネガティブ感情を手放す第一歩になります。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医