マインドフルネスの話

瞑想で「注意資源」の無駄使いを防ぐ

パソコンに向かって仕事をしているときもメールが届いていないか気になったり、打ち合わせのときに、手元のスマホにLINEのメッセージをチェックしたり……目の前の作業をしながら他のことに注意が向かってしまう状態が続くと、「注意資源」がどんどん消費されて、脳はエネルギーを失ってしまいます。

「注意資源」とは、私たちが何かに向けて注意を向けるエネルギーのことです。注意資源には限りがあるため、1日のうちであちらこちらに注意を向けていると、どんどん使われてしまって、脳は疲労状態に陥ります。何となくだるい、やる気がでない、寝ても疲れが取れない……というときは、体の疲労ではなく、この脳疲労を起こしているかもしれません。

脳疲労がさらに進むと、自律神経が乱れてくるため、不眠や胃腸の不調、じんましんを起こしたり、うつ病を発症するケースさえあります。

この予防のためには、マインドフルネスの瞑想が役立ちます。あちこちに散らばってしまった注意を「今、ここ」に意識的に集中させて、呼吸瞑想を行いましょう。朝の起床時に5分間、夜の就寝前に5分間だけでも行うと、脳疲労の軽減につながります。

また、日ごろできることでいえば、昼休みの1時間だけでも、メールやSNSの通知をオフにする時間を作ったり、夜、眠る2時間前には携帯やパソコン、テレビなど情報端末を遠ざけるようにするのもいいでしょう。

「注意資源」を自分の内側に向ける時間をつくることを習慣にして、心のバランスを取り戻してください。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医