マインドフルネスの話

「気が散って集中できない!」の特効薬

目の前には今すぐやらなくてはいけない仕事があるのに、すぐに気が散ってしまって集中できない…! そんな状態になることは、よくあるものです。

もともと人間は長時間の集中状態を維持することは苦手なので、それが普通であるともいえるでしょう。マイクロソフト社の発表では「人間が集中状態を維持できる時間は、8秒」という衝撃のデータもあるほどです。

では何の手もないのか、ということはありませんので、大丈夫です。ここでは、誰でも今すぐできる集中力をアップさせる「ラベリング」という方法をご紹介しましょう。

この集中力アップ法は、もともとはインドの「ヴィパッサナー瞑想」という瞑想法のメソッドで、今ではマインドフルネス瞑想の一つとされています。

やり方はごく単純で、頭に浮かんだ雑念を単純な単語に置き換えて、心の中で何度か繰り返し唱えるというものです。

たとえば、「昨日、〇〇から言われた無神経な言葉が気になってしょうがない」というときには「無神経」とか「言葉」を何度も心のなかで唱えます。ざっくり「雑念」という単語でもかまいません。繰り返し唱えた後に、「よし、仕事に戻ろう」と唱え、集中するべき仕事に意識を向けます。これを、雑念が浮かぶたびに繰り返してください。

雑念が浮かぶことで、注意がさまよっている状態になりますが、ラベリングによって瞬間的にその思考を止め、注意を本来向けるべき対象に戻すことができます。「今日はどうも気が散りやすいな…」というときに、試してみてください。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医