マインドフルネスの話

「失敗の無限ループ」に陥ったら「メタ認知」

なぜか同じタスクを何度も間違えたり、ある特定の人と仕事をするとうまくいかなくなったり。同じような失敗を繰り返してしまい、そこから抜け出せなくなる……そんなケースをよく耳にします。

なかなかそこから抜け出せないとしたら、それは「記憶の奴隷」、もしくは「感情の奴隷」になっている可能性があります。つまり、過去に失敗した経験や、ある相手とうまくいかなかったというネガティブな感情がいつまでも残ることで、同じ結果を招いてしまっている状態です。

「思考が現実化する」という有名な言葉がありますが、まさしく失敗のイメージ、失敗したときの感情が、何度も何度も失敗を引き寄せる……というループに陥っているのです。

この望ましくない習慣は、仕事に限らず、人間関係でもよく起こります。「恋愛関係の終わり方がいつも同じパターン」という人は、この負のループに陥っているかもしれません。

この記憶と感情の奴隷から抜け出すには、一度、自分を俯瞰してみることです。

具体的には、失敗するまでの過程をできる限り思い出し、その時々で自分はどんな考えや感情を抱き、どう行動したのかを洗い出す作業をしてみましょう。それを紙に書き出してみたり、仮に「Aさん」と自分を他者のように置き換えて、第三者として観察するのも、客観的に分析しやすくなります。

このように、自分自身を客観的に俯瞰し、ありのままに見つめることを「メタ認知」といいます。すると、自分の考え方の癖やパターン化した行動が徐々に見えてきます。これがメタ認知によって得られる「気づき(awarenessアウェアネス)」であり、メタ認知で気づきが得られる状態が「マインドフルネス」です。

このマインドフルネスの状態に至ることが、記憶と感情の奴隷から抜け出す第一歩となります。気づきは、抜け出せなかった考え方や行動を変えるきっかけとなります。すると、自然とこれまでと違った結果が得られるようになるでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医