マインドフルネスの話

「寂しさ」「不安」とマインドフルネス

週末に人と会う予定が入っていないと不安になったり、SNSで過剰に人とのつながりを求めたり、大勢の人に囲まれている様子をアップしたり……一人でいる寂しさを埋めるために、他者とのかかわりを過剰に求めてしまう、という人は少なくありません。

一人でいると寂しくて不安になってしまう人は、心理学的にみると「自己肯定感が高くない」可能性があります。自分自身を認めたり、肯定することが苦手なため、他者から褒められたり、頼りにされることで埋め合わせようと、過剰にコミュニケーションを求めてしまうのです。

この場合、注意が必要なのが「相手との距離感が適切でなくなる」という点です。不安からくる焦りで、相手に対して過剰にコミュニケーションを求めたり、束縛してしまったり。ときにはこうした傾向が加速して、ストーカー行為やDVにまで発展することもあり得ます。

問題がそこまで表面化していなくても、「いつの間にか人が離れていってしまう」「交際が長く続かない……」ということが度重なる場合は、自らの心の奥に隠し持った寂しさからくる、こうした落とし穴にはまりこんでいる可能性があります。

思い当たる場合には、一度、ありのままの自分、ありのままの相手との関係性について見つめなおす時間をとることをおすすめします。

まずは呼吸瞑想をして、心身をニュートラルな状態に整えましょう。その後で、自分の精神状態、言葉、行動を思い出して、第三者の視点で見つめなおします。次に、自分が働きかけたときの相手の言葉や表情、行動などのリアクションを見つめなおしてみましょう。大切なのは、そこに対して良い悪いといった評価や価値判断をしないことです。ただ、ありのままに見つめることが大切です。

また、相手の感情や気持ちを想像することもいったんは手放してください。ネガティブな想像に振り回されて、さらに不安や寂しさが募ってしまいがちだからです。大切なのは、本当にあった事実をそのまま見つめ、受け止めることです。そうすることで、自分の心のクセが見えてきます。

次に、心のよりどころを相手から切り離して、自分自身にシフトしていく作業を行います。スポーツをしたり、自然が豊かな場所にでかけて瞑想したり、映画や本に没頭したり。自分自身が夢中になって楽しめることを持つと、それが新しい心のよりどころになります。それが一つでも、二つでも、十あってもよいでしょう。

自分のうちから湧き出る心のよりどころを持つことで、ふと寂しさが募ったときにも、すぐに自分をニュートラルな状態に戻すことができるようになっていきます。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医