マインドフルネスの話

判断力を高めるマインドフルネス

仕事をしていると、様々な判断をする場面に直面します。スケジュールの急な変更や思わぬトラブル、人材の配置や案件の選択……。都度、スピーディに最適な選択をする「判断力」が、ビジネスパーソンには非常に重要です。経営者はもちろん、さまざまな裁量権を持つリーダーたちには必須の能力でしょう。

ところが、「自分は最適な選択をしているのだろうか」「この判断で間違いないのだろうか」。そんな不安がふくらんで悩み、判断が遅れて機を逸してしまったり、いつもなぜか間違った判断をしてしまう……。そうした悩みを持つ人は少なくありません。焦る気持ち、苦手意識がますます判断する能力を落としてしまうことも。

ビジネスに必要な判断力の強化のために、マインドフルネス瞑想を取り入れたのが、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズでした。瞑想を習慣にすることで「物事がクリアに見え、現状が把握できるようになれる」という言葉通り、彼のビジネス上の選択がいかに的確だったかは、アップルが世界を席巻するグローバル企業に急成長したことから確かであったといえるでしょう。

マインドフルネス瞑想は、「今、このとき」に注意を向けることで、焦りや疲れなどから脳を解放し、リラックスモードに落ち着かせます。すると、あらゆる思考のバイアスを取り除き、感情に取り込まれることが少なくなるため、冷静に物事を見つめるクリアな精神状態が維持されるようになります。

すると、これまでに気が付かなかったリスクやプラスの要素が把握できるようになり、より合理的、効率的な判断もできるようになるでしょう。

大きな判断、リスクのある選択をする前には、ぜひマインドフルネス瞑想を行ってから検討することをおすすめします。そして何よりも日頃から瞑想を習慣化しておくことで、いつ重大な判断を求められる状況になっても冷静で的確な判断を下すための、心の準備をしておくことができるのです。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医