マインドフルネスの話

ながら瞑想……歩く瞑想、食べる瞑想、ボディスキャン

リラックスや脳疲労をとり、記憶力や判断力、想像力を高めるマインドフルネス瞑想に興味を持ち、実践してはみたものの続かない……という人は少なくないでしょう。じっと座って何分も呼吸だけを意識し続けることが、どうにも辛抱ならない、という方は少なくないと思います。

とはいえ、マインドフルな状態になれるのは呼吸瞑想だけではありません。「今、この瞬間に注意を向ける」のがマインドフルネスの入り口です。静かな場所で瞑想する以外にも、いろいろな方法があるので安心してください。

例えば、通勤時や散歩の道すがらおこなうことができる、「歩く瞑想」です。自宅から駅まで、駅からオフィスまで、歩くことに注意をしっかりと置きます。「今、右足が上がった。かかとから着地してつま先が地面をとらえた。同時に左足が上がった……」といった要領で、足の裏が地面をとらえた感触や脚を持ち上げて前へ運ぶ筋肉の動きなどに集中します。コンビニへちょっとした買い物に出た時などに行ってもよいでしょう。

一人で食事をすることがあれば、「食べる瞑想」もおすすめです。本を読みながら、テレビを見ながら、スマホをいじりながら食事をするのではなく、ただ、食べることだけに意識を向けるのです。箸で食べ物をはさんだときの感触や口に入れた時の香り、噛み応えや味のひとつひとつの要素をじっくりと時間をかけて味わいます。早食いや食べ過ぎも防げるので、ダイエットにも効果的です。

夜、ベッドに入ってから入眠までの時間を瞑想に当てるのもよいでしょう。仰向けに体を横たえ、手足は自然にゆったりと伸ばし、頭からつま先までの全身に意識を向けて体のSOSを探る「ボディスキャン瞑想」です。

最初は頭に注意を向け、次に首、肩、胸、おなか、腰、脚、腕、手……といった順に意識を集中させて、痛みや重さなどの違和感はないか探っていきましょう。順番を逆にして、足のつま先からはじめて、段々と上に上がってゆく方法でも構いません。このとき、他のことは考えず、ただ、体の感覚に注意を向けてください。安眠効果も期待できるでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医