マインドフルネスの話

「食べる瞑想」でダイエット

コロナ禍における外出自粛要請で、低活動なライフスタイルが余儀なくされるなかで「体重が増えてしまった…」という人が増えてきています。実際に、日経BPコンサルティングが2020年8月に行ったインターネット調査によると、健康上の気になっていることとして、34.3%の人が「肥満/体重の増加」をあげています。

ステイホーム、テレワークで運動量が減る上、自宅にいればいつでも食べ物が手に入る環境にあるために、以前よりも食べ過ぎてしまうことが、ひとつの大きな要因となっているといえるでしょう。仕事をしながら、スマホを見ながら、何の気なしに食べ物をつまんで口に入れる……そんなことを日に何度も繰り返しながら「分かっているけどやめられない!」という人は、多いことでしょう。

そんなときには、「食べる瞑想」を行ってみてください。

マインドフルネス瞑想といえば、あるがままの呼吸を観察する呼吸瞑想が有名ですが、実は、食べること自体も瞑想になります。やり方は簡単で、一口一口に集中して、その味や歯ごたえ、香りをあるがままに、丁寧に味わうだけ。

食べている間は他のものを見たり、触ったりせず、ただ、食べることだけに心を置いて、最後はゆっくりと飲み下し、のどを通って胃に落ちていくことも感じ取るようにしてください。時間をかけてゆっくりと丁寧に食事をすることで、いつもよりも少量で満足することができることでしょう。

食べる瞑想の目的は、「足ることを知る」ことにあります。食べ過ぎてしまうことが習慣になっている人は、自分は何をどれぐらい食べることで満たされるのかがわからなくなっていることがよくあります。食べることだけに注意を向けることで、この失った感覚を取り戻すことができるでしょう。

また、他の満たされない欲求を「食べる」という刺激で埋め合わせていることも少なくありません。「食べる瞑想」は、そんな自分でもよく分かっていなかった気持ちのありように、気づくきっかけにもなるでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医