マインドフルネスの話

「コロナうつ」を防ぐマインドフルネス

コロナ禍における行動制限のなかで、ストレスを強く感じる人は確実に増加傾向にあります。感染に対する不安だけでなく、長期的な経済的影響も大きく関わっているために、女性や子どもたちの自殺率が増加するなど、社会的弱者にその影響は強く現れているようです。

その傾向は日本だけではなく、より強いロックダウンを行っている各国においても同様に現れており、実践的なメンタルケアの必要性が世界的に高まっています。

そんななか、メンタルヘルスを促進するための有望なアプローチとして、マインドフルネスが新たに注目を集めています。マインドフルネス瞑想がうつ病や不安の症状を軽減するのに効果的であることは、数々の研究で明らかになっていますが、コロナ禍における強いロックダウン下でその効果を実証したのが、2021年5月に発表された、中国・復旦大学の研究です。

『Translational Psychiatry』に発表された論文によると、中国での新型コロナウイルス発生時において、3週間のマインドフルネス実践者と非実践者の苦痛、不安、ストレスを評価したところ、マインドフルネス実践者のスコアが優位に低くなることが分かりました。研究者は「パンデミックのような危機的な状況において、マインドフルネスは公衆のメンタルヘルスを保護するための選択肢となる可能性がある」と述べています。

強いロックダウンが行われた中国その他の国と比べれば、比較的ゆるやかな「自粛要請」であった日本ですが、それでもそれが長期に及べば、メンタルに支障をきたす人が今後ますます増えてくることは予想できます。効果的なメンタルケア方法の一つとして、マインドフルネスを実践することを、ぜひ習慣化して自分の心を守っていきましょう。

参考:https://www.nature.com/articles/s41398-021-01459-8#Sec19/

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医