マインドフルネスの話

無意識の偏見を低減するマインドフルネス

人種や性別、国籍で人を差別してはいけない。それは、現代人ならば当たり前に備えているべき、コモンセンス(「常識」「良識」)です。

ところが、「自分は差別をしない」と認識していても、無意識のうちに植え付けられたバイアス(思い込みや偏見)によって、ついつい差別的なものの見方をしてしまったり、失言をしてしまうケースは少なくありません。

多様性を尊重する現代社会では、差別のバイアスを持っていることは非常に危険なことといえます。自分では悪気がなくても、うっかりとした言動で誰かをひどく傷つけてしまったり、社会的な信用を失うことも少なくありません。政治家や著名人が差別的な失言をしてしまったことで、役職を失ったり表舞台に出られなくなったりする報道をみても、それは明らかです。

とはいえ、深く自分の身の内に根付いてしまった潜在的バイアスを消し去ることはなかなか難しいことです。

しかし、昨今の研究で、マインドフルネスを行うことでこの潜在的バイアスによる否定的な行動を低減させる効果があることが分かってきました。

セントラルミシガン大学で行われた実験によると、72人の白人の大学生を、10分間のマインドフルネスエクササイズをオーディオで聞かせる群と、10分間の無関係な録音を聞かせる群に分け、人種や年齢に関する連想テストを行ったところ、マインドフルネスエクササイズ群は人種と年齢のバイアスが少なくなることが確認されました。

研究者は「年齢や人種に限らず、あらゆる種類の否定的なバイアスを防ぐのに役立つ可能性がある」と語っています。

より多様的な社会に、自分のコモンセンスを無意識レベルからアップデートするためにも、あらゆる新しい情報を得るとともに、ぜひマインドフルネスに触れることもはじめてみてください。

参考:https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1948550614559651

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医