マインドフルネスの話

環境の変化に負けないマインドフルネス

毎年4月は、会社でも学校でも、新しい環境のなかでスタートする人が多くなります。新たな環境に対して楽しみな気持ちを持つ人もいれば、反対に、強い不安を持つ人もいます。

たいていの人は、今のままとどまりたい、変化はしたくないという「現状維持バイアス」を持っているので、どちらかというと環境変化に対してストレスを感じる人のほうが多いといえます。

中には、心のバランスを失って「適応障害」になってしまい、心身に不調をきたすケースも少なくありません。

新しい環境に対する心の不穏を防ぐためにぜひやっていただきたいのが、「その場その場に集中する」というマインドフルネス的な手法です。

いきなり複数の新しい仕事のことを考えたり、始めて出会う人すべてに意識を向けたりすれば、当然ながらどんなにメンタルが強い人でも疲弊してしまいます。「1対無数」でいきなり相対しようとせず、常にそのときそのときの瞬間には「1対1」となるように、意識を向けていきましょう。

エクセルにデータを入力することだけに集中する。新しい上司との打ち合わせをするときには、そのことだけに集中する…といった形で、その他のことはその瞬間は手放して、目の前のことに集中することを繰り返してください。

そして、できれば1日の終わりには5分でいいので呼吸瞑想をして、心をリセットしましょう。これを数日繰り返すことで、いつの間にか、新しい環境の中でも無心に仕事に打ち込めている自分に気が付くことでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医