マインドフルネスの話

知覚を磨くと感情コントロール力がアップする!?

イライラして感じの悪い態度をとってしまったり、怒りのあまりひどく相手を傷つけるような言葉をぶつけてしまったり。感情に飲み込まれたあげく、自分がコントロールできずに後悔するような言動をとってしまった経験は、誰もがあるものです。

とはいえ、しょっちゅう感情を爆発させていれば、仕事でもプライベートでも人間関係に大きな弊害が出てしまいます。

感情の起伏の激しさを何とかしたい…そんなときには、マインドフルネスの基本的な実践法の一つである「ボディスキャン瞑想」が役立ちます。

ボディスキャン瞑想は、自分の身体の変化を敏感に察知するためのメソッドです。仰向けに横たわり、自然呼吸を繰り返しながら頭のてっぺんから足のつま先までの身体の各部位に注意を向け、観察していく…というもの。

私たちは日々忙しくしていると、ついつい疲れやしびれ、冷え、痛みや違和感が出てもスルーしてしまいます。そのため、身体からのサインに気付きにくくなり、あとで大きな疾患や痛みにまで膨らんでしまうことにもなるのです。

ボディスキャン瞑想を繰り返すうちに、自分の身体の変化に対する知覚が徐々に鋭敏になっていきます。すると、怒りが込み上げてきたときにも「あ、呼吸が荒くなってきたぞ」とか「顔の筋肉がこわばってきた」「手足に力が入って、強く握りしめている」といったように、身体の変化をいち早く察知することができるようになってきます。

この変化を察知したらすぐに深呼吸をしたり、その場から遠く離れたりすることで、人前で怒りを爆発させることを防ぐ行動をとることができるようになってくるでしょう。

怒りが静まったところで、今度は自分の身体の観察から離れて、現在の状況を客観的によく観察することに挑戦してみてください。これを繰り返すことで、怒りではなく、「冷静な知覚」で問題解決ができるようになってくるでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医