マインドフルネスの話

ネガティブ記憶から抜け出すためのマインドフルネス

「あのときああしていれば…」という後悔や、思い出すのもつらい悲しみなど、誰でも思い出すことがつらい記憶がひとつやふたつはあるものです。
時間の経過とともに、記憶が蘇らせる苦しみが軽減されればよいのですが、いつまでたっても思い出すたびに傷口が新たに開くような苦しみが再現されてしまい、そこからなかなか立ち直ることができない…という人も多いことでしょう。

この「自分の過去の経験の記憶にとらわれる程度」が、マインドフルネスの瞑想によって低下する可能性があることを研究で明らかにしたのが、京都大学とこころの未来研究センターの共同研究グループです。

過去の経験の記憶にとらわれる程度と関係していると考えられているのが、脳の「腹側線条体」と「脳梁膨大後部皮質」の結合性です。

マインドフルネス瞑想を行うことで、「今この瞬間に生じている経験にありのままに気づく」と、この結合性が低下することを発見しました。つまり、「過去の記憶にとらわれる程度」が、瞑想によって低下した、ということです。
しかも、この結合性の低下は、瞑想の実践時間が長いほど大きくなることが示されました。つまり、「今この瞬間に気づく」瞑想をするほど、過去の記憶にとらわれなくなるということを、示唆しています。

過去のつらい記憶にいつまでも苦しんでいる。そんな人は、毎日のマインドフルネス瞑想の実践が、そこから抜け出すきっかけになるはずです。

参考:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2018-07-05-0

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医