マインドフルネスの話

雑念との上手なつきあいかた

「瞑想をしても、次々と雑念が浮かんでしまって、うまく呼吸に集中できません…」
マインドフルネスの呼吸瞑想について、そんなご相談をよく受けます。そんなときには、私はいつも「雑念が浮かぶのは極々自然なことで、まったく問題ありません」とお答えしています。

私たちは高度に発達した脳を持ち、日々、大量の情報にさらされて生きています。そのため、頭をからっぽにすることがとても苦手です。そのため、ふと目を閉じれば、勝手に次から次へと考えが頭に浮かんでくるのは、当たり前のこと。そのたびに焦りを感じたり、反省する必要はありません。

浮かんだ考えをそのままあるがままに受容し、またふたたび呼吸に集中する意識に戻ることで、そっと手放します。それが10回、50回、100回になっても何の問題もありません。この適切な雑念とのおつきあいを何度も繰り返すことで、より深い瞑想へと自らを誘うことができるようになります。
むしろ、雑念に気づけた自分を誉めてあげるつもりで、「よく雑念に気付いたね。ではまた呼吸に戻ろうね」といった言葉かけを心の中でしながら瞑想するのがお勧めです。

ちなみに「雑念」というと何となく無駄で価値がないようなイメージがありますが、頭のなかにふと浮かぶという意味では、「斬新なアイデア」とか「豊かな発想」となんの違いもありません。瞑想中に「これまでまったく思いつかなかった目からうろこのアイデアが浮かんだ」「長年悩まされていた問題に対する解決法がひらめいた」というケースは非常に多くあります。

一期一会の雑念との付き合いを楽しむ。それもまた、マインドフルネス瞑想の楽しみ方といえます。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医