マインドフルネスの話

「怒りの記憶」から抜け出すためのマインドフルネス

「あいつだけは許せない」「いつか絶対にやり返してやる…!」

そんな怒りの感情にとらわれてしまうことがあります。裏切られたり、バカにされたり…理由はさまざまですが、ある怒りの記憶にとらわれてしまうと、繰り返し思い出してはまた新たな怒りの感情が湧いてきて、頭がいっぱいになってしまうことに。イライラとして人や物に当たってしまうようになると、仕事や家庭にも悪影響が出る事態にもなりかねません。

こうした「怒りの記憶の連鎖」を、マインドフルネス瞑想が断ち切ってくれる。昨今の研究で、そんな事実が科学的に明らかになりました。

筑波大学が行った実験によると、37名の大学生に1週間のマインドフルネス瞑想を行ってもらったところ、「怒りの反すう傾向(怒りが伴うネガティブ体験を繰り返し思い出す傾向)」が低減することが明らかになりました。同時に、瞑想の前後には、ネガティブな気分が改善されることも確認されています。

誰かを許せなかったり、報復することばかりを考えてしまったり…そんなネガティブな思考にとらわれて、前に進めなくなった時には、マインドフルネス瞑想をすることで、「怒りの記憶」から抜け出せるかもしれません。ぜひ、試してみてください。

参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/84/2/84_93/_pdf(PDF)

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医