マインドフルネスの話

「無意識の偏見」から意識を開放する方法

「男性より女性のほうがきめ細かな業務に向いている」、「育児中の部下には、負担の少ない業務をさせる」、「外国人スタッフは日本の企業文化の理解が難しい」――

こうした偏った認識から人材の配置を決めたり、タスクの割り振りを行ったりすることで、様々なトラブルにつながることがあります。なぜなら、細かな気配りができるかどうかには、性差は関係ありません。また、育児中でもやりがいをもって負荷の高い業務をやっている人もいれば、日本人よりも日本文化に造詣の深い外国人労働者の方は多くいるからです。

合理的に考えれば、それは当たり前のことです。しかし、私たちは誰もがこうした「無意識の偏見」を持っています。これを、社会心理学では「Unconscious(無意識の)」と「Bias(バイアス・偏見・先入観)」を掛け合わせた造語で、「アンコンシャスバイアス」と呼ばれます。

幼少期から、親や学校から「男は男らしく、女は女らしく」「年上のいうことには従うものだ」といったある種の洗脳が行われることで、いつの間にか私たちに備わってしまった、根拠のない思い込みです。多様性や個性が尊重される現代社会では、当然ながらこの偏見を持っていると、生きづらさや成長の阻害につながることは間違いありません。

特に、リーダー層がこのゆがんだ偏見を持つことで意思決定をゆがませるリスクがあるとして、現在、グーグルをはじめとした多くの企業で、この「アンコンシャスバイアス」排除のための研修が行われています。

自分は非合理的な偏見を持っているかもしれない。それに気が付くことが、アンコンシャスバイアス排除の第一歩です。

マインドフルネスの第一歩は「アウェアネス(気づき)」です。そのため、マインドフルネスの呼吸瞑想を続けていると、認識の解像度が上がってきて、今まで気が付かなかったことに気が付くようになったり、自己理解が高まっていきます。

「女性だから事務仕事が向いていると考えていたが、本当にそうだろうか」「男性部下のほとんどが育児休暇を取っていないが、そのことが問題視されていないな」「体育学部出身だから営業部、という単純な配属は間違ってはいないだろうか」。

今まで疑問にも思っていなかったことに、次々と気が付くように分かっていくでしょう。
ジェンダーやダイバーシティの意識が加速する現代社会では、「無意識の偏見」をいち早く脱ぎ捨てることが、リーダー層には必須のスキルといえます。人材に関する決定を下すときには、まずはマインドフルネス瞑想を行い、偏見の眼鏡をはずしてから行うことを習慣にしていきましょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医