マインドフルネスの話

孤独感を軽減するマインドフルネス

数年前、「孤独は死亡率を高める危険因子」という科学的な研究結果が出たことは、社会に大きなインパクトを与えました。

そもそも人間は社会的な動物であるため、その結果については納得がいきますね。コミュニティーから外れてしまうことで重要な情報が得られなくなったり、病気やけがをしたときに一切のサポートをしてもらえない状態になることは、生命の維持を難しくさせてしまう要因になり得るからです。

昨今のマインドフルネス研究は、このリスクを遠ざけ、社会的な関係を改善する可能性があることが分かりました。
ピッツバーグ大学、バーモント大学などの共同研究チームが行った153人の参加者を対象に行った研究によると、マインドフルネストレーニングを実践したうえで日常生活における孤独感と社会的接触を測定したところ、孤独感は22%減少し、社会的接触は1日平均2回、接触人数が1日1人増えることが分かりました。

研究者は「マインドフルネストレーニングによって、孤独感や社会的断絶といった感情に対する客観性が養われ、孤独の緩和と他者との関与を促進することができる」と語っています。

私たちは他者と関わる前から「こんなことを言ったら嫌われるかもしれない」「自分のことを邪魔に思われるのでは…」と、事実ではないイメージに振り回されて、つい言動がネガティブになってしまうことがあります。「事実をありのままに受け止め、自分の解釈を加えない」マインドフルな状態に整えることができれば、コミュニケーションを過剰に恐れることはなくなるでしょう。

孤独や人間関係への不安に押しつぶされそうなときには、マインドフルな思想を養い、人と関わる勇気を育んでいきましょう。

参考:https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1813588116

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医