マインドフルネスの話

高齢者のメンタルヘルスをマインドフルネスが向上

2025年には全人口の約18%が75歳以上になり、2040年には全人口の約35%が65歳以上になると推計されている日本は、世界でも類のない高齢化社会に向けて加速し続けています。そして、高齢者のヘルスケアの重要性も年々高まってきました。

定年年齢や年金受給年齢が次々と高齢化するなか、いかに長く心身ともに健康を保てるかが、日本の大きな課題であることは間違いありません。

その課題のなかでも、重要なのが「老人性うつ」です。一般に、65歳以上の高齢者に発症するうつ病を老人性うつ、もしくは老年期うつと呼びますが、高齢者人口の増加と共に、その患者数も年々増加の一途をたどっています。

特に、高齢になると仕事の引退や家族との死別、経済的不安などのライフイベントが重なって、精神的ストレスが大きくなり、それがうつ病発症の引き金になることも。同時に、老化による認知機能の低下が、うつ病を重篤化させるケースも少なくありません。

こうした高齢者のうつ病に対して、マインドフルネスが有効であることが最近の研究で、明らかになりました。

トルコのオンドグズ・マイス大学が行った、老人ホームに住む48人を対象とした研究によれば、マインドフルネスに基づくストレス軽減プログラムを実践したグループは、行わなかったグループと比べてストレスのスコアが54.7%減少、老人性うつ病スコアが14.1%減少させたことを確認しました。
しかも、プログラムを終了した後も、約一月の間、その効果が維持されることも分かりました。

加齢するにつれて、病気や経済的な不安からくるストレスや不安感、イライラなどはだれもが募らせていくものです。それに対して、マインドフルネスにもとづく呼吸瞑想や思考法を生活のなかに取り入れることが有効な対策となることが、科学的に明らかになりました。人生百年時代、メンタルを健全に維持し続ける備えとして、マインドフルネスをぜひ、生活に取り入れていきましょう。

参考:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/psyg.12929

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医