マインドフルネスの話

「便利」「快適」を手放す1日で心を取り戻す

現代社会はとにかく「コスパ」重視で、時間も手間も最小限であることが求められます。仕事はもちろん、日常生活の中においても、いかにして最小限のリソースで最大の結果を得られるかを考えることが癖になっている人は多いことでしょう。

それはもちろん、現代社会の中で生きていく中で必要なスキルではありますが、常に効率を考え続けていると、徐々にストレスを募らせることも。なぜなら、常に過去を振り返って反省しながら、より効率よい未来にしようと過度に考え過ぎてしまうことで、「今この瞬間」に気持ちを留める暇もなくなってしまうためです。
そして、頭も心も疲労してしまい、全てに対してやる気を失う「燃え尽き症候群」になってしまう人も。

心の疲れを感じたときには、あえて「便利」「快適」で効率の良い生活から、「一つ一つ丁寧に生きる」生活にスイッチすることをおすすめします。

ペットボトルではなく、茶葉から丁寧にお茶を淹れる。コンビニ弁当ではなく、肉や野菜一つ一つを丁寧に切り、それを一番おいしくなる温度で蒸したり焼いたりする。できた料理を、音も映像もすべてオフにして、一口一口ゆっくり味わう。

また、いつも車で走り抜けていた道をのんびりと歩いてみると、気が付かなかった草花に目を止めたり、吹き抜ける風に季節の移ろいを感じたりもするでしょう。

この一つ一つが、「今、この瞬間」に意識を置く、マインドフルネスの状態に自らを整えることにつながります。 動作の一つ一つ、行動の一つ一つを丁寧に行うことは、「自慈心=セルフコンパッション」という自分を大切にする気持ち、自己肯定感へとつながるともいわれています。

一週間の内の1日でよいので、そうした「今、この瞬間」を丁寧に過ごす日を設けてみてください。心の疲労が取り除かれる実感が得られることでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医