マインドフルネスの話

攻撃性、衝動性を低減させるマインドフルネス

青少年期に起こりやすい問題の一つに、攻撃的、衝動的な行動が発生しやすいということがあります。思春期に妙にイライラして怒りっぽくなったり、特に理由もないのに周囲の大人に反抗的な態度をとったことがある…という人も少なくないでしょう。

感情コントロールが発達段階にあったり、ホルモンバランスの影響があったりと、その要因には様々な説がありますが、ときにその行動が反社会的なレベルに及んでしまうことも。
こうした思春期の攻撃的、衝動的な行動による社会からのドロップアウトを防ぐため、いくつかの教育機関が試みているのが、マインドフルネスの実践です。

例えば、イギリスで導入された「マインドフルネスインスクールプロジェクト」では、学校教育の現場でマインドフルネスを実践することで、不安の軽減や集中力、自尊心、幸福感の向上につながることが確認されています。
同様の試みは、アメリカやカナダの学校教育でも行われています。

また、スペインのアルメリア大学では、高校生の攻撃性と衝動性に対するマインドフルネストレーニングの影響について研究を実施。27人(平均15.85歳)を対象とした同研究の結果によれば、10週間のマインドフルネス瞑想の実施後は、衝動性、攻撃性ともに優位に減少することが確認されました。

思春期の感情の不安定さは、周囲だけでなく、時には本人さえも傷つけてしまう結果をもたらします。成績低下や不登校だけでなく、犯罪に巻き込まれるリスクを高くすることさえあります。

マインドフルネス瞑想を教育の現場に取り入れることで、こうしたリスクを低減し、子どもたちがよりよい未来へと進む一助になるでしょう。

参考:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2016.01385/full

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医