マインドフルネスの話

社会性を育てるマインドフルネス

自分の感情を理解してそれをコントロールしたり、他者の感情を感じ取って共感することができる。自他の感情や状況を考慮しながら適切な行動をとることができる。こうした能力は「EQ(心の知能指数)」と呼ばれています。

このEQを育み、 自分と他者との感情的なバランスをとりながら健康的に社会と関わるための教育「社会的感情学習(SEL)」が現在、教育や心理学の分野で注目を集めており、実際に、世界各国の教育機関で進められています。

その流れの中で、SELにマインドフルネスを導入する動きも増えているようです。

カナダのブリティッシュコロンビア大学が行った研究では、小学4年生と5年生を対象に、マインドフルネスプログラムを含むSELを受けるチームと、通常の社会的責任プログラムを受けるチームに分け、実行機能とストレス度、幸福度、社会性、数学の成績などの評価を行いました。

結果、マインドフルネスを伴うSEL学習を受けた子どもたちのストレスレベルが低下し、共感力、感情コントロール、ポジティブレベルが向上することが確認されたのです。
同時に、攻撃性が大幅に減少することも分かりました。

自分の感情をコントロールできること、他者を思いやること、前向きであること。これらは、人間関係をストレスなく構築しながら、社会の中で自分を活かしていく上で欠かせない能力です。それはこれまで「生まれつきの気質」「育てた人の影響」といった認識が一般的でしたが、後天的に学習することができる一つのスキルであることが、この研究では示唆されました。

その効果は、子どもに限定されたものとは言い切れません。いくつになっても、学べるものである可能性は十分にあります。

どうも人間関係がうまくいかない。社会のなかで生きづらさを感じる。
そんな気づきがあるなら、ぜひ、マインドフルネスを学んでみることをおすすめします。

参考:https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fa0038454

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医