マインドフルネスの話

イライラや不安感は「目の前の行動にフォーカス」でリセットできる

なぜだか分からないけど、心がザワザワして落ち着かない。ちょっとしたことでイライラしてしまう…!

思い当たる原因もないのに、そんな不安や焦燥感、イライラがなくならないようなときは、脳がヒートアップしているせいかもしれません。

スマホをせわしなくいじりながら食事をしたり、絶え間なく続くSNSの通知音に反応し続けたり……そんなライフスタイルを続けていると、常に脳波情報処理し続けることになります。すると、脳のエネルギーが消費しつくされてしまい、疲労がピークに達して、イライラや不安感などでメンタルに支障が出てしまうのです。

そんなときの効果的な処方箋が、マインドフルネスの基本である「目の前の行為に注意を注ぎ込む」という行為。脳はそもそも一度に多数の作業をするマルチタスクが苦手で、ひとつの作業に集中するシングルタスクを得意としています。

そのため、「今、この瞬間」に意識を集中することで、脳の健全性を取り戻すことにつながるのです。集中を続けるうちに、不安やイライラといったネガティブな感情の中枢である脳の「扁桃体」が縮小し、おのずと脳の疲労も解消してゆくことでしょう。

それは例えば、「お茶を飲むことだけに集中する」といったこと。お茶の色と香りをよく観察し、口に含んだときの味や温度を感じ、それが口中から食道を通って胃に届き、体のなかが温かくなる感覚に意識を集中してみる。その一連の流れが、「今という時間を大切に生きる」ことになります。

他にも「歩くこと」や「野菜を刻むこと」に集中してもよいでしょう。自宅やオフィスなど、どんな環境にいても、何かしら心地よいことに注意を注ぐことで、脳のリフレッシュができることでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医