マインドフルネスの話

「人間関係疲れ」を緩和するマインドフルネス

昨今、他者と関わることにためらいや不安、恐怖を感じる若者が増加しているといいます。こうした苦痛が過度に及ぶ場合、「対人恐怖症」(専門的には「社会(社交)不安障害」)の診断に該当する可能性もあり、人前で話すことが極端に苦手だったり、そもそも他者と関わること自体に強い苦しみを感じたりするため、生活に支障が生じます。この疾患の発症要因はいまだ解明されていませんが、遺伝的あるいは後天的な要因により形成される、環境的、対人的刺激に対する過敏性が関与しているとされています。

こうした傾向は中国でも顕著であることから、昨今、遼寧師範大学では、中国人大学生を対象に、対人感受性とマインドフルネスの関係についての研究が行われました。

対象となったのは、17歳から23歳までの中国の大学生1419人です。マインドフルネスレベルと対人感受性に関するアンケート調査を行い、分析した結果、マインドフルネスレベルが高いほどネガティブな感情が少なく、対人感受性は低いために、対人時に感じる苦痛や過度な反応が軽いことが分かりました。逆に、マインドフルネスレベルが低いと対人感受性が高く、ネガティブで否定的になることも判明したのです。

研究者は「対人感受性が高い若者にマインドフルネストレーニングを行うことは、ネガティブ感情の軽減に役立つ可能性がある」と語っています。

対人感受性が高いということは、きめ細かで敏感な感受性を備えているということ。そうした方が積極的に人と関わることは、とても豊かな人間関係を築ける可能性を秘めているとも考えられます。マインドフルネスが、そんな新たな関係性を広げるきっかけになるかもしれませんね。

参考:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2021.624340/full

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医