マインドフルネスの話

「体重が増える不安」を和らげるマインドフルネス

昨今、欧米各国で痩せすぎモデルの規制が進んでいます。イタリアやスペインでは、痩せすぎたモデルの出演が禁止されたり、フランスでも痩せすぎモデルを規制する法律が制定されたりと、様々な広がりを見せています。国内においても、日本摂食障害学会が「痩せすぎモデル規制ワーキンググループ」を立ち上げ、問題に動き始めました。

その背景には、メディアやSNS等で過度に痩せた体型を賞賛する風潮の影響を受け、若年女性たちが過激なダイエットをすることで摂食障害に陥るケースが相次いだことがありました。 

日本では統計的には「やせ」体型の女性が多く、世界的に見ても肥満が少ないといえます。それでも痩せる必要がないのに「さらに痩せたい」という願望を持ち、実際に低体重に陥っている場合、「神経症やせ症」の診断が成立する可能性があり、体重やボディイメージに対する認知の偏りが過度な不安を生み出していると考えられます。

神経性やせ症は主として2つのタイプがあります。食事を極端に減らす「摂食制限型」、そして過食と嘔吐を繰り返す「過食・排出型」です。いずれも著しく健康を損なう食行動であり、命の危険が生じることさえあります。

この「体重が増える不安」をマインドフルネス瞑想でケアする。昨今、そんな研究が京都大学で行われました。

研究では、神経性やせ症の患者にマインドフルネス瞑想を用いたプログラムを毎日5~20分間、4週間実施。その後、心理尺度の不安スコアが低下することが分かりました。

さらに、「体重増加に対する不安」をありのままに受け入れよう」という意識を働かせているとき、不安に関わる脳領域の活動が低下していることも確認されました。
つまり、マインドフルネスは主観的な不安感だけでなく、不安を生む脳活動を抑える効果を持つことも確認されたということです。

神経性やせ症だけでなく、今後も様々な不安を抱える現代人にとって、マインドフルネス瞑想が大きな助けとなる可能性が見えてくる研究です。心が不安にとらわれそうになったときの処方箋として、マインドフルネス瞑想が心強い味方になりそうです。

参考:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-02-02-1

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医