マインドフルネスの話

仮想現実でマインドフルネスの効果が高まる

ヘッドセットを着用し、視覚と聴覚、ときには触覚にも働きかけて、仮想の環境を体験させる「仮想現実(Virtual Reality、以下VR)」の登場から数年たちました。当初はエンターテイメントやゲーム分野で主に広がりを見せていましたが、昨今では教育や医療、訓練、建築、ビジネス上のシミュレーションなどでも活用されるようになりました。

そして、マインドフルネストレーニングでも、VRを活用することでその効果が高まることが、数々の研究で明らかになっています。

イギリス・エディンバラ大学の研究チームが行った、2016年から2022年の間に発表された2523件の論文を分析、評価したところ、VRを活用したマインドフルネストレーニングは、従来のマインドフルネスよりも効果的であり、かつ、瞑想の経験レベルが向上すること。そして、不安、うつ病の軽減や睡眠や感情コントロールにもポジティブな影響があることが確認されました。

ほぼすべての研究において、VRは、森林や草原、洞窟、海などの自然環境に関連した要素を取り入れるために活用されていました。都会で生活する人たちにとっては、自然環境でマインドフルネス瞑想を行うことはなかなか難しいこと。それを、VRを導入することで手軽に、毎日行うことが可能になるうえ、その効果も高まることが明確になりました。

朝は海辺で朝日を浴びながら。夜は森のなかで星に囲まれながらマインドフルネス瞑想をする。VRによって、そんな贅沢なマインドフルネス瞑想が楽しめそうです。

参考:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550830722001227

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医