マインドフルネスの話

マインドフルネスがドライバーの事故リスクを軽減する

一般に、自動車保険に加入するとき、保険料が最も高いのは10代や20代の若年層です。そのわけは、その年齢層のドライバーが最も事故を起こす確率が高いことにあります。警察庁が発表した統計「令和4年中の交通事故の発生状況」によれば、免許所有者10万人当たりの事故件数で最も多かったのが、16~19歳の1039.2件。次いで、20~24歳が597.2件でした。30~34歳は320.2件、35~39歳は290.6件、40~44歳は282.2件と、年齢が上がるにつれて徐々に減少しています。

社会の中で事故を減らすためには、若いドライバーの事故リスクを減らすことが重要であることが分かります。

マインドフルネスがその一助となる。そんな可能性を示唆する研究が、昨今、発表されました。カナダ・マギル大学が行った研究では、21~25歳の26人のドライバーを対象に、4~6日間にわたってオンラインのマインドフルネストレーニングを実施。その後、シミュレーション運転をしてもらったところ、事故発生につながりやすい注意力散漫な状態が優位に減少することが確認されました。

注意力散漫な状態とは、「マインドワンダリング」と呼ばれ、現在行っている目の前の作業から注意が反れ、関係のない思考を行っている状態です。今行っている運転や周囲の状況に注意が向いていなければ、当然ながら急なトラブルに対応できなくなったり、運転ミスのリスクは高まります。

「“今、この瞬間”に意識を集中する」効果を持つマインドフルネストレーニングが、このマインドワンダリングを抑制することで、事故リスクを軽減することが期待できるというわけです。

今回行われたオンラインのマインドフルネストレーニングは、15分間とごく短時間で、1週間弱で効果が現れました。事故リスクを減少させるために、運転に不慣れな人、長時間運転する前、もしくは運転を仕事にする人などは、運転前にマインドフルネスの呼吸瞑想を行うことをおすすめします。

参考:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S000145752300369X?via%3Dihub

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医