マインドフルネスの話

不穏なニュースで心を痛めたときのマインドフルネス

現代社会では、日々、世界中のどこかで戦争やテロ、事件、事故が起こり、テレビやインターネットを通じて報道されています。中には悲惨かつ凄惨な内容の報道もあり、それを見聞きするだけで感情が揺さぶられ、精神的にダメージを追ってしまうことさえあるでしょう。最近では、SNSで個人が発信した、全く配慮がないネガティブな情報を目の当たりにしたことがきっかけで、メンタルの不調を経験する人も少なくありません。

自分の身に起きたことではなく、誰かのネガティブな体験に関する記述を読んだり、写真や動画を観たりすることで感情移入が起こり、精神的に疲弊してしまう「共感疲労」という現象も多くの方が経験しているようです。それにより恐怖感や無気力感にとらわれて、場合によっては日常生活に多大なる支障が生じているケースも見られます。

ネガティブな情報に触れることで心のバランスを崩してしまう前に、ぜひ、マインドフルネスを取り入れて、心を守ってほしいと思います。悲惨なイメージをどんどん膨らませてしまうことに対して、マインドフルネスは有効なストッパーとして働くからです。

まず、静かな環境でしばらく呼吸瞑想を行います。マインドフルネスの呼吸瞑想には、不安を生み出す「偏桃体」と呼ばれる脳内の部位の過剰な活動を抑える効果があることが分かっています。しばらく呼吸瞑想を続けることで、徐々に不安感が収まっていくことでしょう。

次に、ネガティブな情報で自分が精神的にダメージを負っていることについて、上から見ている「もう一人の自分」の視点から静かに見つめます。それに対して良し悪しといった判断はせず、ただ、静かにその状態に自分はあるのだという認識を持つにとどめます。

次に、そのネガティブな事態に対して、自分はどんな影響を与えることができるのか。なんの影響も与えられないのか。それについて考えます。答えを見つける必要はありません。ただ、起こっていることをありのままに見つめ、感じるだけでかまいません。

この一連のプロセスを毎日繰り返すうちに、徐々に心の平静さを取り戻せるようになるでしょう。また、同時にしばらくネガティブニュースをシャットアウトすることもおすすめします。情報が氾濫する現代のなかで、心を守る習慣としてぜひ実践していただきたいと思います。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医