マインドフルネスの話

毎日の掃除が瞑想タイムになる

年末が近づいてくると、徐々に心の重荷になってくるのが自宅の大掃除。窓の薄汚れや雨どいにたまった枯葉、お風呂の落ちないカビやキッチンの油汚れ……日頃、気が付いてはいてもなかなか手が出せなかった汚れと対峙するときがやってきました。始める前からすでに、うんざりしている人も多いことでしょう。

一方、仏教では、掃除は重要、かつまず取り組むべき修行の一つと考えられています。毎日の掃除や畑仕事といった、生活に必要な作業を「作務」という修行として位置づけ、心を磨くための重要な行為と、仏教では考えられているのです。場を整え、清めることで自らの内面も整え、清められていく――ただの掃除も、そうした認識にチェンジするだけで、心の中での意味合いが大きく変わってくるものです。

まっさらなぞうきんを手に取り、水に浸す。しっかりと絞る。パンと広げて床に手で押し付け、力を込めて床を吹き上げていく。そのひとつひとつの作業に意識を集中して行えば、ただの掃除ではなく、禅の修行と同じ「作務」になります。「今、この瞬間」に集中するマインドフルネス瞑想として「心を調える」営みになることでしょう。

とはいえ1年の汚れをまとめて一度にやろうとすれば、やはりプレッシャーになるでしょう。そこで、毎日の瞑想タイムとして、コツコツやることをおすすめします。たとえば、1回の掃除を10分と決めたら、その10分間にトイレの中だけをピカピカに磨く、あるいは自分のデスクの上だけをきれいに整理するなど、小さな目標を立てることで、より一点集中した状態でマインドフルな掃除ができるでしょう。

年末に向けて朝に10分、夜に10分、マインドフルネス瞑想としての掃除を行えば、禅寺のように清々しく清められた自宅で、心穏やかな新年が迎えられることでしょう。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医