マインドフルネスの話

スマホ依存から抜け出すためのマインドフルネス

「ノモフォビア(Nomophobia)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、「No Mobile Phobia」の略で、スマホなどモバイル機器が手元にないと、不安や恐怖を感じてしまう状態を示しています。

トイレやバスルームにもスマホを持ち込んだり、スマホのバッテリーが切れることを極度に恐れたり、ほんの短時間でもスマホでメールやSNSをチェックできないと落ち着きがなくなったり。そんなことが思い当たる人は、少なくないのではないでしょうか。こうした状態がさらに加速して、睡眠不足に陥るなど生活に支障がでたり、仕事や勉強が手につかなくなったり。さらに、強い不安や発汗、動悸、呼吸困難といったパニック症状を起こすようになると、事態は深刻になってきます。

このノモフォビアをマインドフルネスが軽減することを示唆する研究が、昨今、発表されました。

テキサスA&M大学が、大学生135人を対象に行った研究によれば、マインドフルネスレベルが高いほど、ノモフォビアの傾向が減少することが確認されたのです。
研究の参加者は、「ノモフォビア」「マインドフルネスの特性」といった傾向のほか、「スマホの使用頻度」や「問題のあるスマホの使用」、「退屈しやすさ」、「衝動性」といった傾向についてアンケートを実施。その結果を分析したところ、マインドフルネス傾向が高いほど、問題のあるスマホの使用が少なく、退屈傾向や衝動性も低いことが分かりました。

スマホは便利な端末である反面、使い過ぎると基本的な生活や仕事、学習時間を圧迫することも。また、「スマホ脳」という言葉ができるほど、認知機能にネガティブな影響があることも問題視されています。

マインドフルネスは、薬物やアルコールなどへの依存状態を軽減することが、昨今の研究で分かってきました。さらに、「スマホ依存」に対しても、その効果が期待できそうです。便利なスマホを健全な範囲で使用するために、マインドフルネスが役立つことでしょう。

参考:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S030646031931442X?via%3Dihub

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医