マインドフルネスの話

マインドフルネスが「衝動的な脳」をつくり変える!?

ちょっとしたことでカッとなってしまい、大きな声で怒鳴ってしまったり、物や人に当たってしまったり。怒りに支配されて、不適切な言動をとってしまったことは、誰しも経験があるものでしょう。最近では、SNS上で心無い暴言が飛び交うなど、衝動的な怒りが蔓延しているようにも思えます。

一時の怒りの感情の波に飲み込まれ、理性を失ってしまう……そんな衝動性を抑制するのに、マインドフルネスが役立つことを示唆する研究が昨今、発表され、話題となりました。

スペインのグラナダ大学が行ったのは、交通違反者たちを対象とした、マインドフルネス前後の脳の変化を調べるといった研究でした。

交通違反で罰則を受けたことのある平均年齢34.2歳の男女66名を、危険な行動を修正するためのマインドフルネス瞑想(呼吸瞑想やボディスキャン)を行うグループと、行わないグループに分け、4カ月後の脳のMRI画像を解析。脳の構造の変化を観察しました。

結果、マインドフルネスの介入を受けたグループは脳の大脳基底核の「尾状核」の構造に変化が現れることが確認されたのです。研究者は「尾状核の体積が減少することによって対象者の衝動性のレベルは低下し、軽率な行動をとる傾向を減少させ、より適切な行動が促進されることが期待できる」と語っています。

面白いのは、マインドフルネスが心理的な変化にとどまらず、脳の構造自体に変化を及ぼしていること。結果、衝動性が抑制されるといったポジティブな影響を与えているという点です。薬物や外科的な処置なしで、こうした変化を脳に与えられるという事実が判明したのは、非常に興味深いことです。

一瞬の怒りが人生を左右するような重大なトラブルを引き起こすことは、めずらしくありません。怒りに飲み込まれない平常心を養うために、マインドフルネスを日常生活に取り入れることをおすすめします。

参考:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166432824000159

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医