マインドフルネスの話

「セルフ・コンパッション(=自慈心)」と「自己肯定感」

マインドフルネスの本質である「自己への思いやりと、他者への共感性」が最も大切であるということを忘れてはならないと思います。

呼吸瞑想を例に挙げれば、自らのありのままの呼吸を批判せずにただ受け入れてみることを目指します。それはやがて、「自分の存在を認めてあげる」という心の在りようにつながり、さらには自然と他者に対する慈しみ、思いやりの心が涵養されるようになるのです。
その根底にあるものこそが、「セルフ・コンパッション(=自慈心)」です。

自分を大切に思えない人は、人助けをしているように見えて実は見返りを求めてしまうため、助けた相手に感謝してもらえなかった時に深く傷ついたり、怒りなどの陰性感情が芽生えたりしてしまうことがしばしば起こります。何よりもまず自己を大切にする心、自分に優しくあるという姿勢が構築されて、初めて無条件の他者貢献が生まれるということです。

このセルフ・コンパッションは、自尊心とは似て非なるものとされています。自尊心とは、他者から称賛されたり、同年代の人たちよりも収入や地位が高かったりといった、他者の目線を踏まえての自己価値の感覚です。

これに対して自慈心は、自ら主体的に、自分自身を労り、大切に思う心の在り方で、そこに他者の存在は影響しません。人が自信を持って行きぬいてゆくために大切な「自己肯定感」は、自尊心だけでなく、セルフ・コンパッションがともなって初めて健全に育まれてゆくということが、近年欧米の心理学研究によって理解されるようになりました。

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仏教においては、ブッダの教えは「自らが悟りを開く」ということだけにとどまりません。もう一つの大切な柱は、その教えを「人々に伝える」という「利他」の精神です。このことを仏教の言葉では「自利利他円満」と言い、自らを大切にする心は、やがて他者を敬う思いやりや感謝の心につながってゆくことを意味しています。マインドフルネスを真に理解し、体得しようとするとき、それは常に「自らに優しさを向け、そして全ての人に慈悲の心を向ける」という視点に立ったものであることが肝要です。