マインドフルネスの話

「マインドフルネス」と「禅」

マインドフルネスのルーツが禅にあることは、多くの方がご存じのことでしょう。
もう少し詳しくお伝えすると、ブッダが悟りを開いて最初に行った説法に、人が正しい生き方を実践するための8つの方法を伝えた「八支正道(はっししょうどう)」というものがありますが、そのなかの7番目に登場する「正念(しょうねん)」を英語で表現した概念が、マインドフルネスです。

正念とは、「正しく意識する」という意味です。情報過多、スピード重視の社会で生きる現代人は、どうしても心が定まりにくく、意識がさまよい、精神のバランスを失ってしまいやすくなっています。そこに、「今この瞬間」に集中することで「正念」を取り戻すマインドフルネスが生まれ、忙しい人、心が弱ってしまった人の間で広まっていったことは、とても自然なことだったといえます。

禅のなかから宗教的な要素をとりはずして「マインドフルネス」とすることで、仏教と近しくない人々へも広く、その知恵を日々の生活に取り入れることができるようになったわけです。非常に聡明な発想だといえるでしょう。

マインドフルネスは、呼吸瞑想が最も有名な技法ではありますが、それだけでなく、毎回の食事、歩くこと、入浴、家事といった日常の動作ひとつひとつの瞬間に意識を向けて、丁寧に取り組むことでも「正念」を実践することができます。実際に、禅の世界では、今でも掃除や食事を作ることも修行のひとつとして、真摯に取り組むことが重要とされています。

毎日の日常の中に、「正念」を取り戻す機会はあふれているということ。ぜひ、日々の生活の行動の一つ一つを丁寧に行うことで、マインドフルな心を取り戻してください。