マインドフルネスの話

「劣等感」とマインドフルネス

「自分は人よりも仕事ができない」「あの人はスタイルがよくて美人なのに、自分は全然違う!」「うちは貧乏で恥ずかしい」。

こうした劣等感は、大小あれど、だれもが心の奥底に抱えているものです。それにとらわれてしまうことで、自信を失ったり、行動をすることや人付き合いができなくなる人も少なくありません。

こうした劣等感は、いったいどこからくるのでしょうか? 例えば、森のなかで一人ぼっちで暮らしていると考えてみてください。今、あなたが抱えている劣等感は、意味を持つでしょうか? おそらく、まったく意味をなさなくなることでしょう。自分以外の他者がいないとき、劣等感はまったく生まれなくなります。劣等感は、自分が他人よりも劣っていると感じる心の動きだからです。

禅では、他者と自分を比較するこうした「社会のものさし」を捨てることを教えています。自分と他者を比較する考え方自体が、存在しません。マインドフルネスも同じです。重要なのは、「ありのままの自分で、今この瞬間を生きる」という価値観なのです。

「社会のものさし」には際限がありません。一度は自分が優位に感じて満足することがあったとしても、すぐにまた違う比較相手を見つけて、劣等感を感じ始めます。決して終わりがない、苦しくて、不毛な競争といえるかもしれません。

マインドフルネスで「今この瞬間」を生きるようになると、価値判断せずに自分をありのままに見つめることができるように変わります。自分は今どんな状態なのか? どんな感情なのか? 自分自身を価値判断せずにただ見つめていくと、自分が劣っている根拠はなく、社会のものさしによる競争は不毛であると、気づきが得られるようになります。

社会のものさしを一度捨ててみて、ありのままの自分を静かに、価値判断せずにみつめること。劣等感に振り回されている人は、ぜひ一度、試してみてください。