マインドフルネスの話

過食を防ぐマインドフルな食事法

「おなかが空いていないのに、つい口に入れるものを探してしまう」「腹8分目がいいのは分かっていても、毎食苦しくなるほど食べてしまう…」など、食べる欲求のコントロールに悩む人は多いもの。太るのは分かっていても、健康を害するとわかっても、やめられない。

それが高じると、精神的なストレスが過剰な食行動に現れる「過食症」になることさえあります。そこまでいかなくても、イライラしてつい甘いものを食べ過ぎた、といった経験は誰もがあるものです。

心のありようが、食行動に影響する。それがよく現れた研究が、2016年、アメリカのブラウン大学から発表されました。マインドフルネスを習慣としている人は、そうではない人と比べ、血糖値を正常範囲にコントロールしやすい、ということがこの研究で明らかになったのです。

「マインドフルネス実践者は高カロリーや高脂肪の食事を控え、運動にも積極的」と同大学のエリック・ラウックス助教授は指摘しています。

つまり、「マインドフルに食べる」ことが、過食の抑制につながるということ。目の前の食べ物一つ一つに注意を向け、口に運び、ひと噛みひと噛みをじっくり味わう。どんな食感なのか? どんな香りがするのか? どんな味わいなのか?
飲み飲んで胃に落ちてゆくまで意識をむけ、全身全霊で食べること。それが、マインドフルな食事法「マインドフル・イーティング(食べる瞑想)」です。

結果、時間をかけてよく噛んで食べるので血糖値も上がりにくくなるし、満腹感も得やすくなるので、量が少なくても満足しやすくなるのは必然といえます。それだけでなく、こうして美味しく食べられる日々に、また食べ物をもたらしてくれた人々や大自然に、感謝する心を育むこともできるのです。

毎日の食事を全てこの方法でしていたら時間が足りないと思われる方は、最初の1口か2口だけでも結構です。お腹だけでなく、心もいつもよりもずっと満たされるので、ぜひ実践してみてください。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医