マインドフルネスの話

忙しい朝の「歯磨き瞑想」

多くのマインドフルネス実践者は、起床後や就寝前のちょっとした時間を利用して、呼吸瞑想を習慣として取り入れているのではないでしょうか。「今このとき」に集中するためには、心穏やかな時間を少しでも確保して実践してほしいものですが、時には朝に寝過ごしてしまって瞑想をする時間がなくなってしまったり、1日の終わりの就寝前に疲れが強くて「今日は瞑想する気力がない・・・」という日もあることでしょう。

そんなときには、歯磨きをしながら瞑想をすることをおすすめします。
「今このとき」に集中するのがマインドフルネスの瞑想ですから、集中の対象は呼吸だけに限りません。普段行っている動作の一つ一つに意識を向けて集中すれば、それも十分に効果的な瞑想になります。時間がなくても、どんなに疲れていても、歯磨きだけは欠かさず行う行動だと思いますから、このときを瞑想の時間にすればムリなく行うことができるでしょう。

日ごろはスマホを眺めたり、音楽をかけたり、考え事をしながら歯磨きをしていると思いますが、瞑想として行うときはやはりこれらのことはすべて手放すのが理想的です。歯ブラシが口の中に当たる感覚のひとつひとつに意識を置いて、ていねいに行いましょう。最後に口の中に水を含み、吐き出すまでの触感や音や動きのすべてを味わい尽くしてください。

その他にも、お茶を飲む、着替えをするといった動作に集中してもよいでしょう。自分がやりやすい、集中しやすい習慣を、瞑想に置き換えてみることをぜひ、試してみてください。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医