マインドフルネスの話

メタ認知で「やる気が出ない」を解決する

「やらなければいけないと分かっているのに、どうしてもやる気がでない……」
そんな気力もやる気も失ってしまったとき、もしくは部下や同僚がそんな状態になってしまったときの処方箋として、「自分をメタ認知する」というマインドフルネスの手法が役立ちます。

マインドフルネスとは、「今、この瞬間に気づく」状態を指します。この状態に至ることができると、自分自身を客観視して、俯瞰で見つめることができるため、さまざまな思い込みやネガティブな感情によって隠されていた事実や自分の気持ちに気付くことができるようになります。また、自分の周りの状態や他者の感情にも気づくようになって、そこから枝葉のようにどんどん認知が広がります。これを、「メタ認知」といいます。

このメタ認知の状態をつくる第一歩として、「何もやる気がおきない状態」と「そう感じている自分」とをいったん切り離し、俯瞰して見つめてみましょう。マインドフルネス瞑想を行ったあとは、より精神がクリアな状態になっているので、行いやすくなります。自分は今、なぜやる気がおきないのか。それはいつからなのか。きっかけはなんだったのか。自分の状態、事実をありのままに観察しましょう。

次に、観察から得られた今の自分の悩みや苦しみに対して、善悪の判断をせずに、そのまま受け入れます。無視したり、抱え続けるのではなく、ただ、受け入れること。それを繰り返すことで、徐々に悩みや苦しみの深刻度が低くなり、小さなものに感じるようになります。すると、自分が今やるべきことも見えてきて、そちらへ集中することもできるようになってくるでしょう。

「やる気がおきない…」の正体を自分で認知し、ただ受け入れる。まずは、こうしたメタ認知の入り口に自分をいざなってみてください。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医