マインドフルネスの話

EⅠ(感情的知性)を高めるマインドフルネス

「EI(感情的知性)」という言葉が、今、ビジネスの世界で注目を集めています。

EIとは、アメリカの心理学者であり、科学ジャーナリストでもあるダニエル・ゴールマンが提唱した概念で、自分や他者の感情に気づいたり、それらを区別したり、感情に対する反応をコントロールする能力のことを指します。具体的には、「自己認識」「自己管理」「社会性」「人間関係管理」の4つの行動特性があると、ゴールマン氏は分類しています。

昨今、このEIが社会のなかで他者との信頼関係を高めながら、ビジネスを成功させるための重要な能力として、ビジネスの世界で強く求められているスキルとなりました。

そして、このEIを構成する先の4つの行動特性は、後天的に育成ができるものであり、マインドフルネスがその効果的なトレーニングになるということも、明らかにされています。

ウエスタン大学が行った、アメリカのビジネス雑誌「フォーチュン」が選出する「急成長企業100」に雇用されている成人289人を対象に行われた試験によると、8週間のマインドフルネストレーニングプログラムにオンラインで参加することで、EIが向上することが確認されました。参加者は「電話で話していても、同僚が何を感じているのかわかった」といった共感性、「ストレスが多い状況でも落ち着くことができる」などの感情コントロールが向上すると同時に、ネガティブ感情の減少も報告されました。

現在、ゴールドマンサックス、グーグル、インテル、ナイキといった、世界経済をけん引するグローバル企業がマインドフルネストレーニングを導入していますが、従業員のストレス軽減だけにとどまらず、その能力を大きく飛躍させることにもつながっているようです。

リーダー、プレイヤーなど、立場に関わらず、チーム全員でEIの能力を高めるために、マインドフルネスの導入が役立つでしょう。

参考:Ruby Nadler, Julie J Carswell, John Paul Minda, Online Mindfulness Training Increases Well-Being, Trait Emotional Intelligence, and Workplace Competency Ratings: A Randomized Waitlist-Controlled Trial. Front Psychol,2020 Feb 21;11:255.

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医