マインドフルネスの話

自分の「強み」を見つける方法

「あなたの長所は何ですか?」「あなたの誰にも負けない強みを教えてください」

進学や就職、転職の面接の定番のこうした質問に、準備なく即答できる人は少ないかもしれません。逆に、自分のダメなところ、人よりも劣っているところを聞かれたほうがスラスラと答えられる、という人は多いことでしょう。とかく、日本人は自己肯定感が低く、減点法でものごとをみる気質が強いといわれているので無理もないことでしょう。

しかし、そのスラスラと出てくるダメなところ、欠点と思えるところに、実は自分の強みが隠れていることがよくあります。というのも、性格的な弱みは、強みの裏返しであるといえるからです。

例えば、「自分の言いたいことが言えず消極的」という弱みなら、「謙虚でよく周りを見ている慎重さがある」という強みを持っているといえます。「おおざっぱで不注意」なら、「細かいことを気にしない大らかさ」が強みということです。

自分ではマイナスに感じる性格も、実は俯瞰して客観的に見返してみると、性格的な強みであることに気付くことができます。

自分の強みになかなか気づきづらいのは、「自分にないものがよりよいもの」ととらえがちな習性が人にはあるためです。自分にないものがうらやましく思えて、とても気になる……そんな心理が働いているのです。

しかし、もともと物静かな人が、急に明るく社交的にふるまうことは難しいだけでなく、大きなストレスになってしまうでしょう。それよりはありのままの自分を見つめ、強みを発見して、そんな自分を容認することが大切です。

ないものねだりをやめ、自分には自分の強みがある、良さがある、それを価値あるものとして大切にする。それが、自己肯定感を高めて、ありのままの自分で生きやすくなる秘訣です。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医