マインドフルネスの話

マインドフルネスとアンガーマネジメント

社内のコンプライアンス意識が高まる昨今、一昔前のようにオフィスで厳しく叱責したり、感情が高まるままに大声で怒りの感情を表す社員に対しては、厳しい目が向けられるようになりました。特に、パワーハラスメントが発覚すれば、社内の評価にも大きなマイナスとなるのは間違いありません。

ところが、「そうわかってはいても、どうしても抑えられない…」「きつく部下を怒鳴りつけてしまった」というマネジメント層の方も少なくありません。もしくは、無自覚に怒りの感情をオフィスでばらまいてしまっているケースや、職場ではなんとかセーブできても、その反動で、家庭内で怒りの感情が爆発してしまう人も多くいらっしゃいます。

怒りは一瞬の爆発ですから、あとで自分が発した心無い言葉や、大人げない態度を思い出し、後悔して落ち込んだ…という経験は、誰もがあることでしょう。

こうした怒りの感情をコントロールする技術のことを「アンガーマネジメント」といいます。怒りの感情とうまく付き合うための心理トレーニングとして、アメリカで始まったものですが、マインドフルネスの考え方や実践法を組み合わせることで、さらに上手に自らの怒りと付き合えるようになることが期待されます。

怒りを否定したり、無視するのではなく、「怒りを感じている自分」「衝動的に感情を爆発させようとしている自分」に気づき、客観的にとらえることがそのファーストステップです。客観的に見つめることで、冷静さを取り戻し、感情を暴れさせるのではなく、怒りの原因となったものを冷静に把握して解決するほうへ、思考を導くことができるようになります。

また、マインドフルネス瞑想をすることでも、怒りは低減することが分かっています。筑波大学が行った実験によると、1日5~10分の瞑想を1週間続けたところ、怒りの感情が低減し、同時に「心地よさ」は増加することがわかりました。

怒りのコントロールに難しさを感じている人、ストレスの多さからそんな傾向が出てきたときには、マインドフルネス瞑想を活用しながら、アンガーマネジメントをすることをおすすめします。

参考:平野 美沙, 湯川 進太郎「マインドフルネス瞑想の怒り低減効果に関する実験的検討」心理学研究/84巻(2013)2号

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医