マインドフルネスの話

「何もかもがうまくいかない」を引き寄せている原因は?

友人や家族との人間関係がうまくいかずに疲弊したり、仕事のミスを繰り返したり。何もかもがうまくいかず、誰かに助けを求めたい、相談したいと思っても、親密な相手がおらず、孤独にさいなまれる。そんな状況に陥れば、誰もが「どうして自分ばかりがうまくいかないんだろう」とわが身の不幸せを嘆いてしまうことでしょう。

しかし、実はその不幸せは「自分ばかり」ではなく「自分が自ら選んだ」可能性があります。というのも「自分が幸せになれるわけがない」とか「自分はいつも間違うダメな人間だ」「自分は人に迷惑をかけている存在だ」といったような罪悪感を抱えていると、人は無意識に自分を追い込むような選択をしたり、自分よりも他者の希望や欲望を優先させてしまったりすることがあるからです。

そのために、よりよい条件や環境を得るチャンスがあっても「自分なんて…」と見過ごしてしまったり、人から無理難題を押し付けられてもそれを受諾してしまうことに。自分を卑下しているために、人と親密な関係になりそうになると距離をとってしまうために、孤独にも陥りやすくなります。そうしたケースでは、無意識に自分が幸せを遠ざけるような行動を選んでいることに、本人は気が付いていないことが多々あります。

何もかもがうまくいかない。そんなことを感じたときには、起きた出来事をひとつひとつ、見つめなおしてみることをおすすめします。目を閉じて呼吸瞑想を行い、心身を一度リセットしたあとに、起きた出来事をありのままに時系列で思い出してみましょう。そのとき、他者の感情を想像したり、善悪を判断したりしないようにしてください。事実だけをありのままに記憶から取り出すことが重要です。

自分はどんな言葉や行動を選んだのかをひとつひとつ冷静に見つめるうちに、何がうまくいかない原因だったのか。次に、どんな行動や言葉をすれば、自分を幸せにすることができるのかが見えてくることでしょう。

1日の終わりに「呼吸瞑想+振り返り」を繰り返すことで、徐々に罪悪感に振り回されない行動をジャストタイムで選べるようになるでしょう。自分を幸せにするための習慣としてぜひ行ってみてください。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医