マインドフルネスの話

「人の評価が怖い…」をなくすマインドフルネス瞑想

人前で話をするような状況で、他者からどう見られているか、どう思われるのかに対して強い不安や恐怖を感じ、言いたいことが言えなくなったり、やりたいことができない…そうしたマインドは誰もが持つものです。しかし、それがあまりにも過度になり、日常生活に支障が出たり、心身に悪影響を及ぼす状態にまでなると、問題です。このような疾患を「社会不安障害(社交不安障害)」といいます。

社会不安障害は若年層で有病率が高くなる傾向があり、学校や会社での社会的な関係を結ぶ上で、大きな障害となってしまうこともあります。人前で話したり、食事をしたりすることに対して過度な緊張を持つようになるため、仕事や学校生活などの社会的な活動が難しくなるケースもあります。

この社会不安障害の症状を軽減するために、マインドフルネス瞑想が活用できる可能性を示したのが、広島国際大学、広島大学の共同研究チームによる発表です。

同研究チームは社会不安傾向が高い学生33名のうち、マインドフルネス瞑想を実地するチームと実施しないチームに分け、比較実験を行いました。実施するチームには瞑想に関する心理教育を行い、その後、1週間の瞑想エクササイズに取り組むよう指導したところ、社会不安を示すスコアが優位に低減することが分かりました。
さらに、瞑想を中止した1週間後も、その効果は持続することも確認されました。

社会不安症の傾向が強い人は、人から実際に受けた言動ではなく、自分が想像する相手からの言動に不安や恐怖を感じてしまいがちです。つまり、自分の頭の中で苦しみを作り、それに自分で傷ついてしまうのです。

マインドフルネスは「今この瞬間」に意識を置いてあげることで、事実をありのままに受け入れるメンタルを養います。すると、自分を少し離れた状態から、客観的に見つめることができるようになっていきます。すると、こうした自分が自ら作り出したイメージに苦しめられることも徐々に少なくなっていくでしょう。

対人関係に不安をもったときには、マインドフルネス瞑想の時間を作り、事実を冷静に、ありのままにみつめる心を取り戻すことをおすすめします。

参考:日心第83回大会(2019)マインドフルネス瞑想が社交不安に及ぼす影響(PDF)

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医