マインドフルネスの話

「天にいるもう一人の自分」は最上のアドバイザー

「こんな相談したら馬鹿にされるかもしれない…」「恥ずかしくて人には言えない!」。

誰もが、そんな悩みの一つや二つ、あるものです。あるいは1日にいくつもそんな悩みや疑問が次々と浮かぶという人もいるでしょう。そんなときには、ぜひ「天の上からみているもう一人の自分」に相談することをお勧めします。

マインドフルネスの手法に「メタ認知」という心の機能を応用したものがあります。マインドフルネスとは、「今、この瞬間に気付いてあるがままに受容する」状態のことを指します。自分自身を客観視し、俯瞰でみつめる「メタ認知」によって、その状態へと自らを近づけていくことが可能です。

つまり、自分自身の今現在の状態を客観的に、冷静に分析するために「天の上にいるもう一人の自分に、自分自身の今の状態をあるがままに、客観的に見つめさせること」が、メタ認知の入り口となります。

そのメタ認知の視点から、自分の悩みを改めて見つめなおしてみてください。コツは、自分によく似たそっくりさんが、悩みを自分に相談してきた…とイメージすることです。

「今日、会議で失言してしまった」「仕事でいつもやらないような失敗をしてしまった」など、相談してみてください。すると、自分自身のこととして考えると重大に感じることでも、客観視してみたら「大したことじゃないや」と思えたり、それまで考え付かなかった解決策を提案できたりすることは、よくあります。

人は、だれしも自分自身のことは大げさにとらえてしまったり、視野が狭くなるものです。そんなときこそ、天の上にいるもう一人の自分は、自分のことを最も詳しく知り、親身になってくれる、よき相談相手になってくます。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医