マインドフルネスの話

慢性腰痛の痛み、精神的ストレスを緩和するマインドフルネス

高齢者に限らず、20~30代の若い世代でも、腰の痛みに悩む人は少なくありません。実際に、厚生労働省の調査では、腰痛に悩む人の数は全国に2800万人もいることが分かっています。日本人の4人に一人は腰痛ですから、まさしく国民病といえるでしょう。

腰痛のやっかいなところは、多くの場合で「原因不明」というところです。

医師の診察やX線、MRIの画像検査で原因が得的できる腰痛を「特異的腰痛」。調べても原因が分からない腰痛を「非特異的腰痛」といいます。そして、腰痛の約85%が非特異的腰痛に分類されるといわれています。

腰痛がある人のうち、10人中8~9人が、原因不明のまま悩まされ続けているということです。何をすれば治るのか、いつ治るのか…そんな見通しのつかない不安と痛みに対する恐怖を抱えている人はとても多いという現状があります。
昨今では、「腰痛はストレスやうつなどの精神的なことが原因」という一説も出てきました。実際に、人間関係や仕事の悩みをきっかけに、腰痛が悪化する人は少なくありません。

そんななか、昨今の研究によると、マインドフルネスによるメンタルケアが、腰痛緩和に役立つことが分かってきました。
スペインで行われた研究では、慢性腰痛患者70人を対象にマインドフルネスを取り入れたストレス軽減プログラムを実施したところ、痛みとストレスが軽減されることが確認されました。ストレスホルモン「コルチゾール」と、炎症誘発物質の両方のレベルが低減することが分かったのです。
さらに、睡眠の質や生活満足度、幸福度や活力のレベルも大幅に増加することも判明しました。

身体的な痛みやメンタルケアに留まらず、幸福度まで上げることが分かったのは、常に腰痛に悩まされている人たちにとっては大きな朗報です。腰痛に悩む人は、マインドフルネスの呼吸瞑想、全身の感覚に意識を集中させるボディスキャン瞑想を実践することをおすすめします。

参考:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0276734

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医