マインドフルネスの話

マインドフルネスで拒食症患者の不安が軽減

ストレスからドカ食いをしてしまったり、逆に食欲がまったくなくなって食べられなくなったり…精神状態が食行動に大きな影響を与えることは、皆さんも実生活の中で経験していることかと思います。

そのことがよくわかるのが、昨今、京都大学病院精神科の研究グループが発表した研究です。同研究では、マインドフルネス瞑想を行うことで、拒食症(神経性やせ症)患者の不安が軽減することが確認されました。

同病院に通院する拒食症患者21人に、自宅や病院で毎日5~20分間、瞑想してもらったところ、一月後には不安に関するスコアが低下。同時に、脳の状態を機能的時期共鳴画像(fMRI)で調べたところ、不安に関わる脳領域や、「自己へのとらわれ」を生み出しているとされる脳領域の活動が低下していることが分かりました。

体重増加やその他のストレスから、過剰な不安を抱えることで発症する拒食症の治療として、マインドフルネスが有効である可能性が示唆されたというわけです。また拒食症においては「身体像のゆがみ」という現象(不健康なレベルに痩せた状態を理想としてしまうこと)が治療の大きな支障となることが知られており、瞑想によって自分という存在を過剰に意識してしまう「自己へのとらわれ」を手放すこともまた、治療の大きな助けとなることが期待されています。

ストレスから過食している。もしくは体調は悪くないのに食欲が落ちている…そんな実感があるときには、マインドフルネスの呼吸瞑想を実践してみてください。
自然な食欲が戻ってくる助けとなるでしょう。

参考:Neural correlates of a mindfulness-based intervention in anorexia nervosa(Published online by Cambridge University Press: 02 February 2023)

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医